有名な「ウサギとカメ」のお話を「こころの健康」に例えて考えてみます。
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ある日、ウサギはカメを、足が短くてのろまだとあざ笑いました。 |
なぜ、ウサギはカメをあざ笑ったのでしょうか。
相手を、足が短い、のろま、ダメなやつ、と先入観で思い込んでいました。
逆に、自分のことも、足が早い、優秀なやつ、と勘違いしている、とも言えます。
物事の一面だけ見て、隠れている面を見ないようにしていませんか。
例えば、「就活は怖い」とか
「この会社は嫌だ」とか
「自分には向いていない」とか
「あの人は厳しいから嫌いだ」とか。
自分で自分の視野を狭めて、苦しくなっているだけかもしれませんよ。
ルービックキューブの大会では、観察時間が与えられ、攻略の鍵になると言います。
見方を変えて、ぐるっと見てみると、突破するルートが見えるかもしれません。
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カメは笑いながら答えました。 |
なぜ、カメは笑っていたのでしょうか。
楽しかったから、ではありません。
腹を立てていても、ムカついていても、きわめて冷静です。
現実的で柔軟な捉え方で、笑い飛ばして脳をだます
ことで楽になることがあります。
判断をつかさどる脳は、感情の影響を大きく受けます(*)
例えば「面倒くさいな、やりたくないな」という感情が浮かんでしまったら
「ふん、ふふふふーん」と鼻歌を歌ってみる
「ハーッハッハッハー」と狂言のように笑ってみる
脳は「あれ?これは楽しいことなのか?」と勘違いして本当に楽しくなると言います。 *林成之「脳に悪い7つの習慣」幻冬舎新書
就活中の先輩たちは、
その街の美味しいものを食べた、とか、神社めぐり、御朱印集めを兼ねた、とか
鬱々としないための自分なりの楽しみを見つけていました。 |
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「確かに、あなたは風のように速い。でも競争すれば、私はあなたに勝ちます。」 |
なぜ、カメは感情的に反論しなかったのでしょうか。
「ヒドイことをいうね、ウサギとしてサイテー」と全否定をし返したり
「僕は君が大嫌いだ」と感情的に応戦したりしたら、それこそ関係修復が出来ません。
自分の感情や考えを上手に表現する
ことが出来ています。
まず相手の良い面を認め、その上で自分は劣っていないとはっきりと伝えています。
これは「アサーション」という手法です。
「アサーション」とは、自分の意見や考え、気持ち、要望などを、率直に正直に、
自分も相手も尊重する意思を持って伝える自己表現のことです。
1950年代のアメリカで行動療法の一環として開発されたもので、
1970年代に入ると、攻撃的にならずに強く主張する方法として人権回復運動を
支えたといわれています(*)。キング牧師の「I have a dream~」の演説が有名です。
現在では、習慣や馴れ合いによって発生する社会的失敗を予防する対人関係スキルの
トレーニングとして、医療や教育の現場で積極的に取り入れられている手法です。
これをカメは使っているのです。
「勝つと思います」という予測でも「勝ちたいです」という願望でもない
「勝ちます」という未来の表現に、カメの自信を感じます。 |
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ウサギは、そんなことは絶対に有り得ないことと、カメの挑戦を受けることにしました。 |
なぜ、ウサギはカメの挑戦を受けたのでしょうか。
負けたくない、負けることは許さない、特にカメには負けたくない、
と思ったのでしょう。足が早い人もいれば、遅い人もいてあたり前なのに。
そんなところで競っても意味がない、
いっそ二人で協力してこの道を整備して地図に名を残さないか、と誘っていたら、
その道は「ウサギカメロード」になって英雄になっていたかもしれません。
提案を持ちかけたのはウサギだから、ウサギが先、「ウサギカメロード」
これも一つの勝ち方です。
勝ち方は一つじゃないのです。
「第一志望に入らなきゃ意味がない」とか
「あいつには負けたくない」とか
「恥ずかしい思いはしたくない」とか
変なところにこだわっていたり、競ってしまったりしていませんか。 |
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キツネが、コースとゴールの位置を決めることになり、二匹は合意しました。 |
なんと。第三者が存在していたとは。初めて知りました。
そうなると、疑問が沸いてきます。
本当にキツネは両者にフェアなコースとゴールを設定したのでしょうか。
理不尽、不条理、不都合…フェアじゃないことはある、かも。
ウサギにとって不利な長距離コースを設定する…
昼寝したくなるような木陰が中間地点にくるように…
カメが接待や裏金で買収したのではないか…
買収していなかったとしても、ウサギは森ではちょっと嫌われているから…
カメの寿命は万年だから付き合いが長くなるのは…と思惑があったのではないか…
なんて、裏の裏まで考えてしまいます。
コネや好み、えこひいき、忖度は存在する、と思っていた方が、
戦略をたて攻略する甲斐があるというものです。 |
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約束の試合の日、二匹は同時にスタートしました。 |
なんと。戦いはその日ではなかったとは。これも初めて知りました。
そうなると、疑問が沸いてきます。
ウサギとカメが競争することに同意してから、実際に競争する当日まで
何も書かれていない「空白の期間」が存在しているということです。
この間、ウサギとカメはどのように過ごしたのでしょうか。
一人で頑張れない時は、人の力を借りて良い。
もしかしたら、カメはコーチをつけていたかもしれません。
高慢なウサギのことですから、嘲笑は、一度や二度ではなかったはず。
一度言われて悔しい思いをしたカメは、コーチをつけてトレーニングを積み、
ウサギの弱点を分析し、キツネを買収し、勝負をふっかける「その時」を
虎視眈々と待っていたのかもしれません。
そう考えると、
「勝ちます」と言った時のカメの、自信と不敵な笑み、納得が行きます。 |
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カメは一度たりとも休むことなく、
一歩一歩、ゆっくりと、着実にゴールに向かって進みました。 |
なぜ、カメは一度も休まなかったのでしょうか。
カメにとっての目標は、ゴールにたどり着くこと、であったのに対して
ウサギにとっての目標は、カメに勝つこと、だったからです。
顧客は誰か。目的は何か。目標は何か。理想は何か。
という、ドラッガーのマネジメント理論のままです。
ウサギはカメを気にして、後ろを振り返り、
カメのスピードを基準にして、自分の走りを変え、完全にゴールを見失ってしまいました。
この時のウサギの行動を見ていると、何となく
大学入試の時は成績トップだったのに、入学後にパッとしない学生と重なります。
学び舎にいる学生、ほぼ全員が、何かしらの不満足な要素を持っています。
親が地元って言ったから…国立って言ったから…
模試で無理って判定されたから…センターで失敗したから…滑り止めだったから…など。
不満足なままで生活を送ってすねていても、カッコイイわけではないし、
悲劇のヒーロー、ヒロインを演じていても、時間が過ぎていくだけです。
周りに合わせず、ぶっちぎりのトップを狙って下さい。
あなたに期待してくれている顧客は誰ですか。
あなたの次の目標は何ですか。
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ウサギは、道端で横になると、一寝入りしました。 |
なぜ、ウサギは途中で寝てしまったのでしょうか。
眠くなったからです。
油断や過信ではありません。
ではなぜ眠くなったのでしょうか。
自分に合う走り方と時間とエネルギーの配分
はできていますか。
ウサギは敵か逃げるための猛ダッシュは得意ですが、長距離・長時間は走れません。
自分に合う走り方をしなければ、疲労困憊、眠くなるのは当然。
身体が持つ防衛本能です。
猛ダッシュが苦手なのに、一夜漬けしていませんか。
猛ダッシュが苦手なのに、ギリギリに出社していませんか。
猛ダッシュが苦手なのに、朝ごはん抜いていませんか。
猛ダッシュが苦手なのに、臨機応変に何とかしようとしていませんか。
合う、合わないの判断をする前に、パワー配分を見直してみませんか。 |
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ようやく目を覚ましたウサギは、猛スピードで走りましたが、
彼が見たのは、カメが既にゴールインしていて、
疲れを癒し、気持ちよさそうに寝ているさまでした。 |
このあと、ウサギはどうしたと思いますか。
落ち込んだ?悔しがった?
もうカメに高慢なセリフを言わなくなった?
リベンジを誓って、トレーニングを始めた?
大切なのは負けた後です。
「負けた、落ちた、もうムリ」「ミスした、人生詰んだ」
と一番決めつけているのは自分ではありませんか。
そう言っておくのが一番楽だから。
落ち込んだり、悔んだり、憎んだりするのは簡単です。
でも、今、目の前の負けは、人生の負けではありません。
事実を事実として受け止め、「原因」と「対策」を考え「行動」に移すことが
結局は、自分の気持ちを正しく解放するのかもしれません。
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のろまでも、努力する者が競争に勝つのです。 |
さて、努力とは?競争とは?勝つとは?いったい何でしょうか。
この物語は大きな質問を投げかけています。
コツコツ、地道に…
具体的にカメがどんな努力をしたのか、全く描かれていません。
競争する、競う…勝つ、負ける…
甲子園の決勝戦で戦った両チームのピッチャーの
どちらがプロ野球選手として大成するかは、わかりません。
この勝負の後、カメのこころは?ウサギのこころは?
そして、あなたのこころは、どうですか。
カメのこころ、ウサギのこころを想像したあなたなら
目の前の壁と、どう勝負しますか。
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物事の一面だけでなく、隠れている面を見る。
現実的で柔軟な捉え方で、笑い飛ばして脳をだます。
自分の感情や考えを上手に表現する。
勝ち方は一つじゃない。
理不尽、不条理、不都合…フェアじゃないことはある。
一人で頑張れない時は、人の力を借りて良い。
顧客は誰か。目的は何か。目標は何か。理想は何か。
自分に合う走り方と時間とエネルギーの配分。
大切なのは負けた後です。 |
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